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2004/03/14

「国立コロニーのぞみの園」問題

テレビ朝日は2月24日、「ニュース・ステーション」の中で「揺れる終の棲家…重度知的障害者の『地域移行』」と題し、「国立コロニーのぞみの園」の問題を約15分間に亘って取り上げました。
これに対して、「“入所者を段階的に地域へ移す”という厚生労働省の方針が背景にあるが、テレビ朝日の報道は、あまりにも“反対”の立場に偏り過ぎている」と、地域で生活する障害者や親などから、抗議や再検討を求める声が相次いでいます。

● 2月24日の「国立コロニー」に関する報道について(抗議と要請)
http://www1.odn.ne.jp/ikuseikai/2004/0310newssta.html
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会
(知的障害児・者の親の団体)

国立コロニーのぞみの園は、全国の重度知的障害者(成人)の生活施設として、1971年に群馬県高崎市に開設されました。国が管理する唯一の知的障害者施設ですが、政府の行財政改革の一環として2003年10月に独立行政法人化されています。
ちなみに、埼玉県所沢市には、国が管理する唯一の重度知的障害児(児童)の生活施設として、国立秩父学園があります。

さて。
国立コロニーのぞみの園の問題は、2002年8月から1年間に亘って議論が重ねられた厚生労働省の検討委員会(知的障害者の地域生活支援を考えることが目的)での最終見解が、その背景にあります。
検討委員会(座長:岡田喜篤・川崎医療福祉大学学長/元・国立秩父学園園長)では、「のぞみの園の入所者よりも支援がむずかしい障害者が、地域生活に移行している」「のぞみの園には毎年30億円もの上乗せ補助が付けられ、職員の給与は民間にくらべて高額だが、入所者へのサービスの水準が低い」ことなどを指摘し、「地域生活への移行を進める際は、不安を抱く本人や家族の心情に配慮し、グループホームなど地域生活の基盤整備に取り組むことが必要である」との見解を発表しました。そして、その基盤整備を前提にして「2008年3月までに入所者 500人の3~4割を段階的に出身地のグループホームなどに移行させる」という最終方針を打ち出しています。

番組では、グループホームなどの「受け皿」の不足を指摘し、反対派の親たちの声も紹介しています。しかし、検討委員会が最終方針を出すまでの経過については全く触れず、岡田座長が「思い切って冒険してみませんか?」と発言したようすだけを切り取って意図的に再現し、また、「入所者がパンフレットを逆さに見る」などの「障害の重さを印象づけるようなシーン」を、ある種の悪意を持って意図的に報道しました。
番組の最後では、久米宏キャスターが「のぞみの園に対する税金の支出はムダづかいとは思えない」「いまやるのはムチャだと思います」などとコメントしています。

これに対して、前述したように、全日本手をつなぐ育成会が3月10日に抗議文を発表したほか、日本グループホーム学会(室津滋樹代表)など3団体も、同様に声明や要請文を発表しました。
「番組は、地域生活への移行が強引に実行されている印象を与え、地域での“あたりまえの生活(ノーマライゼーション)”が否定的に描かれている。知的障害者への偏見を助長しかねない。」とテレビ朝日に抗議したものです。また、全国の48障害者団体で構成されているDPI日本会議も、協議の場を作るように求めています。

日本グループホーム学会の室津代表は、「国が責任を持って受け皿を作らなければならないことは確かだが、受け皿がなければ障害者を入所施設に放っておいてよい、ということにはならない」と話しています。
先日も記しましたが、「重度障害者を一般地域社会から切り離して、別の社会(施設など)で暮らしてもらう」とする政策は、ノーマライゼーションの考え方が浸透してきた今日では、明らかな誤りだと言えます。
検討委員会は、「決して、入所者を強引に親元に戻そうとしているわけではない。あくまでも、地域生活が可能となる条件を整備した上で段階的に地域生活に移行させるものだ。」と述べています。
拙速で機械的な「地域生活への移行」だとすれば、確かに批判の対象になり得るでしょうが、少なくとも、検討委員会や厚生労働省はそのようなことは言ってはいません。
ただ、テレビ朝日の報道のような問題が起きる背景には、「知的障害児・者施策の周知がまだまだ不十分だ」という点がある、と考えます。また、本人や親たちが挙げる声も、まだまだ一般地域社会に届いてはいません。
それだけに、日本グループホーム学会や全日本手をつなぐ育成会には、障害者の地域生活支援の重要性について、いま以上に熱意を込めて訴え続けてほしいと願っています。

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