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2005/07/31

障害者自立支援法~精神障害者の通院医療費

障害者自立支援法が成立すると、いままで福祉施策が後手に廻ってしまっていた精神障害者についても、ようやく障害者施策の中に組み込まれることになります。
併せて、障害者雇用促進法においても、精神障害者の雇用を促進するための施策(但し、身体障害者や知的障害者と違い、事業主に雇用義務を課すものではないようです。)が図られることになりました。

少なくとも、これだけを見ていると、精神障害者福祉が前進してゆくような印象を受けることでしょう。
しかし、精神障害者にとっては福祉施策も当然大切ではあるものの、どちらかと言えば医療の比重がかなり高いため、医療面でのサービス(医療費負担軽減等)が欠かせません。
このため、現行では、精神福祉保健法第32条に基づいて「精神科通院医療費の公費負担(通称:32条医療)」が行なわれています。


【32条医療とは?】

精神保健福祉法第32条に基づく「精神科通院医療費公費負担制度」
・薬代も含む。入院は対象外。
精神科通院(心療内科等も含むことができる、とされている)以外は対象外。
有効期限2年(更新可)。
・申請が認められさえすれば、利用できる(精神疾患ならば、病名・軽重は基本的に問わない。)。
・必ずしも精神障害者保健福祉手帳(精神障害者としての施策を受けるための根拠)を持っていなくても良い、ということになっている。


【32条医療での精神科通院医療費の計算(健康保険の自己負担分)】

・利用しない場合 … 30%(3割)⇒ 通常の健康保険扱い
・適用され、利用する場合 … 5% ⇒ 注:自治体によっては、この5%分も自己負担しなくて済む
計算例
<1か月の精神科通院医療費が ¥10,000 だったとき>
 通常の健康保険扱い(30%負担)… ¥3,000
 32条医療適用(5%負担) … ¥500 ⇒ 6分の1で済む


さて。
この32条医療ですが、実は、障害者自立支援法がスタートすると、精神保健福祉法から削除されます。
障害者自立支援法での「自立支援医療」というものに組み込まれることになるからなのですが、組み込まれると現行の32条医療から大きく後退してしまう、ということが、いま、関係者の間では大問題になっています。


【障害者自立支援法での精神科通院医療はどうなる?

原則1割負担(10%)
一定以上の所得があると、健康保険での3割負担(30%)になってしまう
有効期限1年(更新可)⇒ 現行の32条医療の半分に
精神疾患の病名・軽重によっては、対象外になる ⇒ とても自立支援とは言えない
 認められる疾患統合失調症狭義のうつ病(いわゆる「内因性」のもの)、てんかん
 ストレス性のうつ病、心身症、いわゆる「自律神経失調症」、うつ状態 等は原則的に不可。


【障害者自立支援法での精神科通院医療費の計算(健康保険の自己負担分)】

・適用されない場合 … 30%(3割)⇒ 自立支援医療は受けられず、負担は通常の健康保険扱い
・適用される場合
 一定以下の所得しかない者(低所得者)… 10%(1割)⇒ 原則1割負担
 一定以上の所得がある場合 … 30%(3割)⇒ 自立支援医療は受けられても、負担は通常の健康保険扱い
計算例
<1か月の精神科通院医療費が ¥10,000 だったとき>
 通常の健康保険扱い(30%負担)… ¥3,000
 原則1割負担(10%負担) … ¥1,000
  ⇒ 現行の32条医療(¥500)の倍に
 一定以上の所得があるため、原則1割負担が認められないとき(30%負担) … ¥3,000
  ⇒ 何と、現行の32条医療(¥500)の6倍に


以上を見ていただくとわかるように、障害者自立支援法は、精神障害者にとっては多額の負担増になります。
厚生労働省では、「現行の32条医療を受けている者については、障害者自立支援法施行後も一定期間の間、現行と同じ軽い負担を認める(「一定期間の間、更新も可能とする」とされています。)」等の経過措置のほか、いわば「附加給付」的なプラスアルファの助成(これにより、自己負担の軽減を図る方針)を行なう、としていますが、財源が絶対的に不足していることはまず間違いないだけに、決して楽観はできないと思います。

そのほか、身体障害児・者や知的障害児・者に対する育成医療(障害児)や更生医療(障害者)のしくみも変わり、ほぼ精神障害者と同様な負担増になります。
これも、非常に大きな問題です。
つまり、障害者自立支援法は障害児・者に対して多額の負担増を強いるものに過ぎず、決して「自立支援」のための法律とは言えません

具体的な運用方法を定める政省令については、まだ具体的なものは明らかにはなっていません
但し、厚生労働省の方針については、既にお伝えしているとおり、かなりの所まで発表済です。
今後、政省令の具体像が明らかになってゆく過程で、負担増に対する何らかの是正措置が図られることになると思いますが、予断は許されないでしょう。

何とも情けない法律…。
しかし、いままで障害者自身の問題意識がいささか薄すぎはしなかったでしょうか?
法律の問題にもっともっと関心を向けるべきでしょう。自分自身の生活に大きくかかわってくるのですから。

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