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2005/08/06

児童デイサービスの問題点と疑義

障害を持つ児童に対する「児童デイサービス事業」。
支援費制度に位置づけられており、障害を持つ児童が、日中、訓練や療育を受けるために利用できます。

さて。
児童福祉法では、本来ならば、18歳になるまで児童デイサービスを受けられることになっています。
ところが、全国の市町村において、小学校卒業とともに児童デイサービスの提供が打ち切られてしまっています。

これは、平成15年6月6日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「児童デイサービスに係る居宅生活支援費の支給等の対象となる児童について」によります。
これによって、児童デイサービスに係る支援費の支給対象となる児童は、「幼児及び学齢児(小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学している児童)」に限定されてしまいました。
そのため、中学校、高等学校、養護学校の中学部・高等部等の児童に対してデイサービスを行なっても、支援費の対象にはなりません。
言い替えると、仮に、小学校等の児童のデイサービスに係る支援費を「流用」して中学校、高等学校等の児童に係るデイサービスを行なったとすると、それは支援費の「目的外使用」となり、返還を求められることもありえます。
要するに、この通知によって、児童デイサービスに係る支援費は、小学校以下の児童に対してのものしか認められていないのです。

通知をよく読んでみると、通知によって制限したのは「児童デイサービスに係る“支援費”の“対象年齢”」であって、「児童デイサービスを受けられる“対象年齢”」ではありません。
したがって、中学校、高等学校等の児童に対する児童デイサービスを行なうことは、もちろんOKです。
しかし、支援費が出ない以上、地方自治体が独自に助成するか、あるいは事業者が自腹を切ることになります。

以上のようなことは、児童福祉法上、非常に重大な疑義があります。
なぜならば、児童福祉法上、支援費の支給対象を制限できるのは、以下の2つの場合だけだからです。

(1)市町村が申請者の障害の程度などを勘案して支給の要否を決めるとき
(2)支給決定を取り消すとき

(1)に関して「どのようなことを勘案するのか?」ということについては、以下のように明確に定められています。

(ア)障害の種類や程度
(イ)保護者の状況
(ウ)支援費の受給の状況(他の種類のサービスの利用の有無)
(エ)保健医療サービス等(療育)の利用状況
(オ)障害児の置かれている環境
(カ)(市町村における)児童居宅支援提供体制の整備状況

一方、(2)に関しては、以下の2つの理由による場合のみしか「取り消し」を認めていません。

(a)本人が居宅支援を受ける必要がなくなったとき
(b)引っ越したとき

つまり、「支給対象を定めるとき、本人の状態にかかわらず一律に年齢制限を加える」という上述の通知は、児童福祉法上許されていないはず、ということになります。
そもそも、「13歳から18歳までを児童デイサービスの対象から外す」ということは、18歳未満を対象とする児童福祉法の趣旨・目的に、明らかに反しています。

「上記の通知を盾にして、市町村が一律の年齢制限を理由に支援費の支給を拒んだ場合」においても、児童福祉法違反のおそれが非常に強い、と言わざるを得ません。
厚生労働省は、本来ならば、そのような違反行為を行なっている市町村があれば、地方自治法第245条の5に基づく「是正の要求」を発しなければなりません。
にもかかわらず、厚生労働省は自ら発した通知によって、逆に違反行為を促している…。とんでもないことです!

違反行為に対しては、実は「抜け道」まで用意されています。
これは、平成12年に施行された地方分権一括法。
この法律は、従来、「通知や通達等の形によって法令を補完」すべく行なわれてきた「行政指導」に対する法的整理を行なったもので、自治事務(地方公共団体の事務)に対する国の権限を大幅に縮小しました。
その結果、国は、法令上に個別の定めがない限り、自治事務に対しては「技術的助言」や「勧告」しか行なえないようになっています。
同時に、地方公共団体は、たとえ「技術的助言」「勧告」を受けたとしても、それに従わなければならない法的な義務もなくなりました。おまけに、「地方公共団体が従わなかった場合でも、国は不利益な取り扱いをしてはならない」という禁止条項まで設けてしまったのです。
これはひど過ぎる!国も地方自治体も、自らの行政責任を放棄してしまうわけですね…。
なんという無責任さでしょう!
障害福祉サービスに対する、国の「あまりにも理解できない、考え方のおかしさ」がここにもあらわれています。

児童デイサービスに係る上述の通知は、自治事務に対する「技術的助言」という位置づけ(地方自治法第245条の4)になっています。
先述の地方分権一括法により、
「技術的助言を受けた地方公共団体は、法的に技術的助言に従う義務を負うものではない」
「技術的助言に従うか従わないかの選択は、地方公共団体の自由意思にまかされている」
という法的解釈がなされています。
逆に言えば、児童福祉法の趣旨を忠実に守ろうとするならば、地方自治体は良識を持って「技術的助言を無視する」ことが必要になるわけです。

「技術的助言を無視する」ための原動力となり得るのは、やはり、児童デイサービスを利用する児童および保護者の生の声をしっかりと伝えてゆく、ということに勝るものはないと思います。
と同時に、サービス提供事業者としても、もっともっと声を挙げていってほしいと思います。
もちろん、「お金が出ないのだから、中学校、高等学校等の児童に対してはやりたくてもできない」ということはわかります。
福祉と言えどもサービス業ですから、もちろん、「ペイがつりあってナンボ」という面はあります。福祉の分野に民間事業者や企業等が多数参入してきた現在だからこそ、より重視される考え方にもなってゆくでしょう。
けれども、だからといって「お金がないから(あるいは、儲からないから)やらない」「(同じく)しかたがない」で終わらせてしまうのはいかがなものか、と思うのです。
せめて、行政の責任を厳しく追及してほしい…。事業者としてもそういうことをやってほしいものです。

【児童デイサービスに関する参考資料】
[PDF]児童デイサービスに係る居宅生活支援費の支給等の対象となる児童について
[PDF]国会での議員質問とそれに対する政府見解(質問:民主党参議院議員 足立信也氏)

【補足】
国は、平成17年度から「障害児タイムケア事業」を始めました。
いわゆる「放課後保護」の形で障害児版学童クラブを提供しよう、というものです。
これは上述の児童デイサービスを補う形となるもので、中学校、高等学校等の児童の利用も認めていますし、それに対する補助もあります。
但し、平成17年度はあくまでも「モデル事業」としての位置づけで、全国でも、ほんのわずかな事業者が実施しているだけです。
なお、障害者自立支援法が施行された場合に障害児タイムケア事業の位置づけがどうなってゆくか、ということについては、いまだ明確な方針が出されていません(関係者の間では「廃止される可能性が高い」といった悲観的な見方が大勢を占めているようです。)。

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