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2007/02/20

高額医療・高額介護合算制度

高齢者世帯(高齢障害者世帯も含みます。)では、同じ世帯で医療保険と介護保険の両方を利用することが少なくありません。
このため、その自己負担額(現行では、医療保険と介護保険それぞれで、別々に自己負担限度額が設定されています。)が著しく高額となってしまう場合も多く、つねづね問題とされてきました。

この問題の打開策として、政府は、平成20年度(2008年度)から「高額医療・高額介護合算制度」をスタートさせます。
これは、平成18年に成立した医療制度改革関連法で盛り込まれましたが、2月17日、制度の詳細が厚生労働省によってまとめられました。
それによると、合算後の自己負担上限額は年齢や所得に応じて細かく設定され(計11分類)、標準モデル世帯(夫婦2人だけの世帯で、世帯全体の年収が520万円未満)である75歳以上の世帯では56万円(年額)、同じく70~74歳の世帯では62万円(同)となります。

【制度による合算後の自己負担上限額】(75歳以上の場合)
標準モデル世帯 56万円(年額)
夫婦で年収520万円以上の高所得世帯(現役並み所得世帯) 67万円(同)
住民税非課税世帯 31万円
年金収入80万円以下等の低所得世帯 19万円

現行では、75歳以上の標準モデル世帯の場合には、医療保険で約53万円(年額)、介護保険で約45万円(同)が自己負担上限額で、合わせて、最高約98万円(同)もの自己負担が強いられています。
制度が導入されるとこれが約56万円(同)となり、自己負担が半分近くで済む計算になります。

制度では、健康保険組合(組合健保)や政府管掌健康保険(政管健保)、国民健康保険(国保)等の各医療保険制度毎に、加入者本人と扶養家族の、医療保険と介護保険(介護サービス)の利用額を合算。自己負担限度額を超えた分を「高額介護合算療養費」として払い戻します。
対象は、医療保険と介護保険の両方で自己負担があった世帯で、現行では、それぞれで自己負担限度額に達していなければどちらか一方からしか払い戻しが受けられませんが、制度ではそれは問われません。
なお、合算できるのは、8月から翌年7月末までにかかった医療と介護サービスの自己負担分となります。

1つの世帯を形成していても、それぞれで異なる医療保険制度に加入している家族は、事務処理がきわめて複雑になる等の理由から、合算が認められません
平成20年度から後期高齢者医療制度も新設され、75歳以上では自動的加入となりますが、高齢者のみの夫婦の場合、ともに74歳以下であれば合算の対象となるものの、どちらかが75歳に達した時点で加入する医療保険制度が異なってしまうと合算が認められず、結果として高負担を招いてしまう危険性があります。
また、子どもの扶養家族になっている場合も75歳になると自動的に合算対象から外されることになるため、全く同様の問題が生じます。
厚生労働省によると、このようなケースについては個別に対応するとしていますが、制度の不備を指摘せざるを得ません。
これに加えて、70~74歳の両親を69歳以下の子どもが扶養しているような世帯の場合には、以下のような、かなり複雑な計算を要することになってしまいました。

【計算手順】
(1)両親(70~74歳)にかかった医療と介護の合計額から、両親に適用される自己負担限度額を差し引いて、両親分の払い戻し額を確定する。
(2)次に、両親の自己負担限度額と子ども(69歳以下)にかかった医療費の合計額から、子どもに適用される自己負担限度額を差し引いて、子どもの分の払い戻し額を確定する。
(3)最後に、両親と子どものそれぞれの確定額の合計を世帯に払い戻す。

自己負担限度額を超えた世帯が払い戻しを受けるためには、介護保険の運営主体(市町村)が交付する自己負担額証明書を添えて、加入する医療保険の運営主体(組合健保や国保等)に申請して下さい。

ところで、この合算制度は、障害者自立支援法による高額障害福祉サービス費との整合性・適用調整関係の面で、かなり問題があります。
現在、介護保険法で定める特定疾病を持つ40~64歳の障害者と、65歳以上のすべての障害者については、障害者自立支援法による障害福祉サービスよりも、介護保険制度の利用が優先されています。そして、その上で、残りの部分を障害者自立支援法による障害福祉サービスとして受けられる、というしくみになっています。
このとき、介護保険の自己負担額(月額)と障害福祉サービスの自己負担額(同)の合算額(同)は、障害福祉サービスのほうの自己負担限度額(同)を超えないように調整され、超えた部分については「高額障害福祉サービス費」として払い戻しが受けられるしくみになっています。
このため、上述した合算制度がスタートしたとき、医療保険、介護保険、障害福祉サービスのどれをも利用している障害者の場合は、「医療保険+介護保険」として合算制度を利用するか、「介護保険+障害福祉サービス」として高額障害福祉サービス費を利用するか、その選択が迫られることになりました。
しかし、前者を選んだ場合は「障害福祉サービスにおける高い自己負担額」が、後者を選んだ場合は「医療保険における高い自己負担額」がそれぞれ残ってしまい、障害者の生活を著しく圧迫してしまう危険性があるのです。

この問題は、医療制度改革関連法の成立にあたって国会でも問題となり、平成18年6月13日の参議院厚生労働委員会において、以下のような附帯決議がなされています。

健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
平成18年6月13日
参議院厚生労働委員会

政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。

6.高額療養費制度の自己負担限度額の在り方について、家計に与える影響、医療費の動向、医療保険財政の推移等を踏まえ、検討を加えるとともに、その適用の利便に資するため、政府管掌健康保険は把握している情報の速やかな通知に努め、国民健康保険においても通知が行われるよう保険者の努力を促すこと。また、後期高齢者医療制度において、広域連合による被保険者への通知が十分行われるよう配慮すること。さらに、高額医療・高額介護合算制度と、障害者自立支援法のサービスに係る利用者負担とを調整する仕組みについて、今後早期に検討すること。

あと3年後には障害者自立支援法の見直しを行なう、ということが同法で規定されており、介護保険制度との統合も視野に入っています。
国は、それまでの間に何らかの調整策を用意するつもりのようですが、悠長なことを言わず、一日も早く、不利のない調整策を示してほしいものです。障害者にとっては死活問題なのですから。

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コメント

かなり信頼できる話として、障害者福祉と介護保険の統合はなくなったみたいな話を、いくつかのルートから耳にしています。

やっと、役人の皆さんにも障害者のニーズと高齢者のニーズが違うということが理解されたようで、その点は喜んでいいと思います。

ただ、財源と負担の問題はどんな形になっても付いて回ってくるわけですから、結局、国民全体の社会保障制度の中で考えること自体は、何も変わらないと思います。

障害者福祉だけを見ていると駄目だと思いますが、あまりこの考え方は浸透していないんですよね、障害者やその関係者には。

投稿: カズ | 2007/02/20 21:01

はじめまして。
この記事、とても参考になりました。トラックバックを送らせていただきます。

投稿: skyteam | 2008/03/11 01:45

この記事へのコメントは終了しました。

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