支援費制度

2005/08/13

衆議院解散~障害者自立支援法(案)廃案後

衆議院解散によって障害者自立支援法(案)が廃案になったため、このままでは、今年度の支援費制度(現行の障害者施策)で最低170億円もの財源不足が生じる。
これは、障害者自立支援法の成立を前提として組まれていた今年度予算の、国庫負担金や国庫補助金を使用できないため。
今年度の国の予算930億円のうち、160億円が新制度への移行を前提とした国庫負担金や国庫補助金で、ほか10億円が「原則1割負担」に基づく財政効果であった。

不足分は市町村による負担になるが、財政事情が厳しい市町村が多数を占めるため、サービスの利用が著しく制限される可能性が非常に高まっている。
つまり、障害者自立支援法(案)が廃案になったからといって、ただ単純に喜ぶべきことでもないのである。むしろ、廃案によって緊急事態の度がさらに高まってしまった、と言ったほうがよいだろう。
言い替えるなら、障害者自立支援法での「原則1割負担」は、ある意味では「必要悪」と言えるかもしれない。
もちろん、170億円もの財源不足を招いている支援費制度を平成15年度から始めるにあたって「きちんとマーケティング(障害者のニーズや現況の調査)を行なったのか?」ということは、厳しく追及されなければならないが。

現在、支援費制度における国と都道府県の予算(補助金)は「裁量的経費」である。
が経費全体の2分の1を、都道府県が経費全体の4分の1を負担し、残り4分の1を市町村で賄う。
裁量的経費は、「障害者施策以外の予算の枠も含めていろいろとやりくりし、工面の結果、支出できれば支出する」という消極的なもので、サービスの質の低下を招きかねない。
国や都道府県の予算が不足してくるとそのツケは市町村に廻り、市町村は、自らの市町村予算をやりくりして工面しなければならない。裁量的経費である以上、国や都道府県がさらに負担する義務はないからである。
障害者自立支援法では上記の負担割合は変えずに原則1割負担を導入するとともに、実は、平成18年1月から、上記を「義務的経費」に変更することになっていた。
義務的経費は、「国と都道府県の責任によってきちんとサービスを提供する」「そのための経費は必ず出す」ということを明確に打ち出すもので、高く評価されてもよいものだ。「原則1割負担」だけにとらわれていてはならない

現在、政局が著しく混乱しており、現・野党である民主党による政権樹立も取りざたされている。
仮に民主党政権ができると、民主党が障害者自立支援法(案)に対する反対の立場を非常に明確に打ち出しているため、現・支援費制度のさらなる財源不足が懸念されよう。
カネが足りなくなれば、サービスを提供しようがなくなる。だから、ただただ法案に反対すればよい、というものではないだろう。きちんとした対案を明確に提出してほしいものである。
しかし、それができている政党や障害者団体は、私の知るかぎり1つもない。ただ「反対」しているだけだ。
これでは、国によって押し切られてしまっても、とても文句を言える立場ではないのではなかろうか?
民主党ばかりではなく、もちろん、障害者ひとりひとりについても言えることだ。

いずれにしても、先の見通しが全く立たず、これからどうなるかがわからない。
なお、尾辻厚生労働相は、8月10日の閣議後記者会見の場で「障害者自立支援法(案)は日本の障害者施策にとって画期的なものである」とし、法案を今秋の臨時国会へ再提出、早期成立に向けて全力を挙げてゆく強い決意を表明している。


尾辻厚生労働大臣 閣議後記者会見 質疑概要
(平成17年8月10日 10:18~10:32)

記者
障害者自立支援法案が衆議院解散で廃案になってしまったが、今後の再提出の可能性などは?
大臣
障害者施策は谷間になっていたと考えており、その谷間をとにかく埋めてゆきたい。また、「谷間の谷間」とでも言うか、精神障害者に対する施策がさらに谷間になっていた。そうした谷間を埋めるべく、今回の法案を出した。
自画自賛するわけではないが、日本の障害者施策にとっては画期的なものだと考えている。頓挫させてはならず、次の臨時国会でも早急に成立するよう、引き続き全力を挙げて努力したい。
記者
国会でもさまざまな審議があったが、修正を加えるということは考えているか?
大臣
やはり、一番の問題点は、障害者に一割負担を求めるというところ。しかし、「その他の制度との整合性」や「将来の介護保険の普遍化」などを考えると、どうしても一割負担は言わざるを得ない。
実質一割負担が厳しい障害者も非常に多いが、既に十分配慮しているものと考える。
反省点としては、国会で十分説明できず、障害者にも十分理解されなかったようだ。再度十分に説明し、理解を得られるものと考えている。それが修正云々よりも本来の姿。
記者
骨格云々や一割負担のところも含めて、ほぼそのままか?
大臣
変える必要はないと考えている。
記者
臨時国会でも成立がむずかしくなれば、現行の支援費制度の予算不足になる。その点については?
大臣
選挙結果がどうなるかわからず、その後も全く予想できない。臨時国会がどうなるかも予測がつかない。大臣としては何も言えない。
しかし、自立支援法案はとにかく早期に成立させないと、日本の障害者施策が前に進んでゆかない。これだけは何が何でもと考えている。
ただ、確かにこのまま支援費制度のままだと予算はどうなるか、金が足りるのかと言われると、大変厳しいと言わざるを得ない。

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2005/08/06

児童デイサービスの問題点と疑義

障害を持つ児童に対する「児童デイサービス事業」。
支援費制度に位置づけられており、障害を持つ児童が、日中、訓練や療育を受けるために利用できます。

さて。
児童福祉法では、本来ならば、18歳になるまで児童デイサービスを受けられることになっています。
ところが、全国の市町村において、小学校卒業とともに児童デイサービスの提供が打ち切られてしまっています。

これは、平成15年6月6日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「児童デイサービスに係る居宅生活支援費の支給等の対象となる児童について」によります。
これによって、児童デイサービスに係る支援費の支給対象となる児童は、「幼児及び学齢児(小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学している児童)」に限定されてしまいました。
そのため、中学校、高等学校、養護学校の中学部・高等部等の児童に対してデイサービスを行なっても、支援費の対象にはなりません。
言い替えると、仮に、小学校等の児童のデイサービスに係る支援費を「流用」して中学校、高等学校等の児童に係るデイサービスを行なったとすると、それは支援費の「目的外使用」となり、返還を求められることもありえます。
要するに、この通知によって、児童デイサービスに係る支援費は、小学校以下の児童に対してのものしか認められていないのです。

通知をよく読んでみると、通知によって制限したのは「児童デイサービスに係る“支援費”の“対象年齢”」であって、「児童デイサービスを受けられる“対象年齢”」ではありません。
したがって、中学校、高等学校等の児童に対する児童デイサービスを行なうことは、もちろんOKです。
しかし、支援費が出ない以上、地方自治体が独自に助成するか、あるいは事業者が自腹を切ることになります。

以上のようなことは、児童福祉法上、非常に重大な疑義があります。
なぜならば、児童福祉法上、支援費の支給対象を制限できるのは、以下の2つの場合だけだからです。

(1)市町村が申請者の障害の程度などを勘案して支給の要否を決めるとき
(2)支給決定を取り消すとき

(1)に関して「どのようなことを勘案するのか?」ということについては、以下のように明確に定められています。

(ア)障害の種類や程度
(イ)保護者の状況
(ウ)支援費の受給の状況(他の種類のサービスの利用の有無)
(エ)保健医療サービス等(療育)の利用状況
(オ)障害児の置かれている環境
(カ)(市町村における)児童居宅支援提供体制の整備状況

一方、(2)に関しては、以下の2つの理由による場合のみしか「取り消し」を認めていません。

(a)本人が居宅支援を受ける必要がなくなったとき
(b)引っ越したとき

つまり、「支給対象を定めるとき、本人の状態にかかわらず一律に年齢制限を加える」という上述の通知は、児童福祉法上許されていないはず、ということになります。
そもそも、「13歳から18歳までを児童デイサービスの対象から外す」ということは、18歳未満を対象とする児童福祉法の趣旨・目的に、明らかに反しています。

「上記の通知を盾にして、市町村が一律の年齢制限を理由に支援費の支給を拒んだ場合」においても、児童福祉法違反のおそれが非常に強い、と言わざるを得ません。
厚生労働省は、本来ならば、そのような違反行為を行なっている市町村があれば、地方自治法第245条の5に基づく「是正の要求」を発しなければなりません。
にもかかわらず、厚生労働省は自ら発した通知によって、逆に違反行為を促している…。とんでもないことです!

違反行為に対しては、実は「抜け道」まで用意されています。
これは、平成12年に施行された地方分権一括法。
この法律は、従来、「通知や通達等の形によって法令を補完」すべく行なわれてきた「行政指導」に対する法的整理を行なったもので、自治事務(地方公共団体の事務)に対する国の権限を大幅に縮小しました。
その結果、国は、法令上に個別の定めがない限り、自治事務に対しては「技術的助言」や「勧告」しか行なえないようになっています。
同時に、地方公共団体は、たとえ「技術的助言」「勧告」を受けたとしても、それに従わなければならない法的な義務もなくなりました。おまけに、「地方公共団体が従わなかった場合でも、国は不利益な取り扱いをしてはならない」という禁止条項まで設けてしまったのです。
これはひど過ぎる!国も地方自治体も、自らの行政責任を放棄してしまうわけですね…。
なんという無責任さでしょう!
障害福祉サービスに対する、国の「あまりにも理解できない、考え方のおかしさ」がここにもあらわれています。

児童デイサービスに係る上述の通知は、自治事務に対する「技術的助言」という位置づけ(地方自治法第245条の4)になっています。
先述の地方分権一括法により、
「技術的助言を受けた地方公共団体は、法的に技術的助言に従う義務を負うものではない」
「技術的助言に従うか従わないかの選択は、地方公共団体の自由意思にまかされている」
という法的解釈がなされています。
逆に言えば、児童福祉法の趣旨を忠実に守ろうとするならば、地方自治体は良識を持って「技術的助言を無視する」ことが必要になるわけです。

「技術的助言を無視する」ための原動力となり得るのは、やはり、児童デイサービスを利用する児童および保護者の生の声をしっかりと伝えてゆく、ということに勝るものはないと思います。
と同時に、サービス提供事業者としても、もっともっと声を挙げていってほしいと思います。
もちろん、「お金が出ないのだから、中学校、高等学校等の児童に対してはやりたくてもできない」ということはわかります。
福祉と言えどもサービス業ですから、もちろん、「ペイがつりあってナンボ」という面はあります。福祉の分野に民間事業者や企業等が多数参入してきた現在だからこそ、より重視される考え方にもなってゆくでしょう。
けれども、だからといって「お金がないから(あるいは、儲からないから)やらない」「(同じく)しかたがない」で終わらせてしまうのはいかがなものか、と思うのです。
せめて、行政の責任を厳しく追及してほしい…。事業者としてもそういうことをやってほしいものです。

【児童デイサービスに関する参考資料】
[PDF]児童デイサービスに係る居宅生活支援費の支給等の対象となる児童について
[PDF]国会での議員質問とそれに対する政府見解(質問:民主党参議院議員 足立信也氏)

【補足】
国は、平成17年度から「障害児タイムケア事業」を始めました。
いわゆる「放課後保護」の形で障害児版学童クラブを提供しよう、というものです。
これは上述の児童デイサービスを補う形となるもので、中学校、高等学校等の児童の利用も認めていますし、それに対する補助もあります。
但し、平成17年度はあくまでも「モデル事業」としての位置づけで、全国でも、ほんのわずかな事業者が実施しているだけです。
なお、障害者自立支援法が施行された場合に障害児タイムケア事業の位置づけがどうなってゆくか、ということについては、いまだ明確な方針が出されていません(関係者の間では「廃止される可能性が高い」といった悲観的な見方が大勢を占めているようです。)。

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2004/11/29

負担増必至~障害福祉サービス法

既報のとおり、厚生労働省は来年(2005年)の通常国会に「障害福祉サービス法」(仮称)の法案提出をめざしています。
障害福祉サービス法は、身体障害・知的障害・精神障害とそれぞれに分かれている障害者福祉サービスを一元化しよう、というものです。

厚生労働省は、11月26日までに、サービス利用者の「1割自己負担」と「食費等徴収(介護保険で言う「ホテルコスト」の徴収)」を前提に、一元化した場合の対予算効果をまとめました。
試算によると、2006年度(平成18年度)の給付費については、年間 1,000億円程度抑制できる見込みとなっています。

● 厚生労働省としての考え
1.「個別給付」と「地域生活支援事業」に再編
 ・個別給付 … 個人単位のサービス(例:施設、ホームヘルプサービス)
 ・地域生活支援事業 … 事業単位のサービス(例:相談支援サービス)
2.利用量に応じた自己負担(1割以上)とする(応益負担
3.入所施設の食費や高熱水費(ホテルコスト)は、原則として全額自己負担とする

● 試算の前提
1.利用者の自己負担1割とする
 ・上限は月額 40,200円
 ・市町村民税非課税世帯は、所得により月額 24,600円または月額 15,000円
2.食費および光熱水費(ホテルコスト)は、原則として全額自己負担とする
 ・食費 … 月額 48,000円
 ・光熱水費 … 月額 10,000円

● 試算による対予算効果
1.2006年度(平成18年度)の給付費(障害福祉サービスに係る費用)の総額は、年間1兆1,500億円
 ・個別給付 … 年間 9,700億円(- 1,000億円)
   (自己負担やホテルコストの徴収を導入しない場合は、年間で1兆800億円)
 ・地域生活支援事業 … 年間 700億円

2003年度(平成15年度)からスタートした支援費制度を契機に、障害福祉サービスの利用が急伸しています。
厚生労働省が11月12日の社会保障審議会障害者部会で示したまとめによると、今後の推移の見通しについては、次のとおりとなっています。

【障害福祉サービスの今後の推移の見通し】

1.在宅サービス(ホームヘルプサービスなど)
 2011年度(平成23年度)は 758,000件(+ 2.3倍)
2.施設サービス
 2011年度(平成23年度)は 436,000件(+ 1.3倍)
  (注:入所・通所施設や小規模作業所などの利用が毎年 14,000件ずつ増えると見込む)
3.給付費総額は毎年7%のペースで増えてゆく

また、特に「個別給付」については、次のとおりとなっています。

【個別給付に係る今後の推移の見通し】

1.当面、年6%のペースで増える
2.2008年度(平成20年度)には、個別給付の伸びが国の一般歳出の伸び(この10年間で平均 1.3%)を超過する
3.2011年度(平成23年度)は年間1兆5,500億円(2003年度(平成15年度)の 1.7倍)
 (11月12日 厚生労働省社会保障審議会障害者部会)

支援費制度では、2004年度(平成16年度)の国の補助金が年間 280億円ほど不足することが見込まれており、財政的に非常に厳しい状況に追い込まれています。
このため、厚生労働省では、上述したように、障害福祉サービスに「自己負担(低所得者に配慮しつつ、応益負担を実施)」を導入することを検討し始めたほか、次のようなことを考えています。

1.介護保険制度との統合既報
 注1:来年度の「介護保険制度改革」に合わせた統合が考えられている
 注2:来年度からの統合は「時期尚早」「議論不足」として見送られる見通し
 注3:関係者の間では「いずれ統合されることは必至」という見方が強い
 注4:介護保険関係者や経済界には、反対の声が強い
 注5:障害福祉関係者の間では、統合を望む声が意外なほど高い(→ 過剰な期待?)
 注6:障害福祉関係者の間では、統合に対する姿勢に大きな差が見られる(→ まとまっていない)

2.新障害程度区分の導入
 ・サービスの利用量や内容を決める尺度となる

3.障害者給付審査会の設置(原則として市町村単位)
 ・介護保険制度をモデルにする

いずれにしても、「ほぼ数年で、新たな負担増や給付抑制策が必要になることが避けられない」というデータが出ており、抜本的な改革が急がれます。

【関連記事(当サイト)】

支援費制度 <注:カテゴリー>
身体・知的・精神の3施策を一本化~障害福祉サービス法
障害者施策改革試案

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2004/07/04

支援費制度改革~包括払い形式導入で事業者は報酬減?

厚生労働省は、支援費制度(障害者施策)の一部を対象に、単価を積み上げてゆく現行の「出来高払い形式」から、一定範囲内の費用によって賄う「包括払い形式」(要するに、上限額が決まってしまう形式)に変更することを決めました。

支援費制度は2003年4月から始まりましたが、既に別の記事でもお伝えしたとおり、ホームヘルプサービスなどの在宅支援サービスの利用者が急増し、初年度(2003年度)だけで財源が128億円も不足する事態になってしまいました。
今年度(2004年度)も財源不足はきわめて深刻で、昨年度実績による試算に基づくと約170億円もの財源不足が見込まれています。
そのため、包括払い形式を導入することによって一定の枠内に費用(支援費制度にかかる経費)を抑制し、支援費制度予算における負担増を防ぐことをねらっています。
厚生労働省は「障害者のサービスの利用を制限するものではない」としていますが、支援内容の低下を招きかねない危険性が高く、財源不足が理由ではあるとはいえ、認めがたい形式ではなかろうかとも思います。

包括払い形式の対象となるのは、脳性まひなど、長時間に亘る継続的な支援が必要な人へのサービス
ちょっとわかりづらいと思いますが、包括払い形式になると、その障害者に必要なサービス全体の量そのものは変わらないものの、当該サービスに要する金額に上限が設けられます。
厚生労働省によると、1か月あたりの「別途定める金額(支援費から導かれる)」に相当するサービス量を上回った場合、包括払い形式を適用するそうです。

現行の支援費制度は、「サービスの量に応じて、(上限を設けずに)単価を積み上げてゆく」という形式。
つまり、障害者に対する支援が増えれば増えるほど、サービス事業者に入る報酬の額も増えます
これを出来高払い形式と呼ぶわけなのですが、これは、考えてみると「当然過ぎるほど当然」のシステムです。

ところが、出来高払い形式から包括払い形式に変わると、どんなに支援の量を増やそうとも、サービス事業者に入る報酬の額には上限が
言い替えると、サービス事業者にしてみれば、事実上、報酬の引き下げになるわけです。
包括払い形式における具体的な報酬体系については今後検討されますが、包括払い形式を嫌ってサービスの提供を調整する事業者が出る、ということが懸念されてくるでしょう。障害者にとっては、サービスの利用の制限にもつながってゆきます。
なお、厚生労働省では、来年度以降(2005年度以降)の導入をめざしています。

財源不足が深刻なため、厚生労働省の社会保障審議会障害者部会は、6月25日、「現実的な選択肢の1つ」として、介護保険制度との統合を視野に入れた部会長案をまとめています(既に別の記事でお伝えしたとおり。)。
しかし、経済界や障害者団体の中では統合への反対論が根強く、厚生労働省は早期の対策を迫られています。
そのため、厚生労働省では両制度の統合問題を脇に置き、ひとまず支援費制度単独で深刻な財源不足の解消を図ることにしました。
その是非はともかくとして、包括払い形式は、財源不足解消のための方法の1つではあります。

【関連記事(当サイト)】

支援費制度改革~社会保障審議会障害者部会 部会長案了承/2004.06.25
支援費制度改革~社会保障審議会介護保険部会 概要/2004.06.28

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2004/06/30

支援費制度と介護保険制度の統合問題~労使も対立

6月28日に開かれた社会保障審議会介護保険部会(厚生労働省)では、支援費制度と介護保険制度の統合について、「現実的な選択肢の1つである」とした社会保障審議会障害者部会の部会長案(6月25日に取りまとめ)も、当然、報告されました。
介護保険部会では、次回会合(7月16日)以降、介護保険の被保険者の見直し範囲や、給付対象の拡大の是非などについて、両制度の統合を視野に入れた議論を進める予定です。

28日の介護保険部会では、日本経団連の委員(いわば「使用者(経営者)」側)が「支援費制度は、始まってからまだ1年である。支援費制度の効率化が優先されるべきだ。」と、統合に反対する立場を表明しています。
これに対して、連合の委員(いわば「労働者」側)は、「介護保険制度の対象には、障害者も加えるべきだ。」と述べ、基本的に統合に賛成する、という立場を表明しました。
同時に、「国は一方的に両制度の統合を進めず、市町村の意見を十分に尊重すべきである。」と求めた、全国市長会と全国町村会による申し入れ書も提出されました。

以上のように、支援費制度と介護保険制度の統合問題については、労使の間でも対立があります。

日本経団連反対姿勢は、第2号被保険者(現行では40歳~64歳)に係る介護保険料の負担増を懸念し、これに反発するところから来ています。第2号被保険者の介護保険料は、雇用主と社員が労使折半で負担するためです。
日本経団連は既に意見書も発表(4月20日)しており、以下の立場を表明しています。

「若年障害者には、就労支援や所得保障をはじめとして、高齢者にくらべて多様なニーズがあり、現行の介護保険制度の枠組みの中で一体的・効果的に障害者福祉が機能しうるのかどうか、疑問である。」
「支援費に係る財政支出が、1年目から当初の予想をはるかに超えているが、その原因について詳細に検証すべきである。」

一方、連合も、5月20日に「介護保険制度の見直しについて」というタイトルで、既に考え方を表明しています。
連合賛成姿勢は、この考え方の中にも示されています(以下のとおり)。

「介護とは、高齢者特有のニーズではなく、疾病や交通事故などによる後遺症でも必要となるものであり、年齢や事由を問うものではない。」
「介護保険制度の改革は、“介護のニーズを社会全体で支え、あらゆる人々の社会参加を保障する”という“社会連帯”に基づいた改革でなければならない。」

正直言って、どちらの言い分ももっともなことで、逆に言えば、支援費制度導入時における見通しがいかに甘かったか、ということを端的に示しているように感じられます。
十分な準備期間を設けて障害者のニーズを的確に把握していれば、少なくとも、支援費制度がいまほどの極端な財源不足に陥ることはなかったのではないでしょうか?

【参考】

日本経団連(社団法人 日本経済団体連合会)
「介護保険制度の改革についての意見(2004.04.20)」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/034.html

連合(日本労働組合総連合会)
「介護保険制度の見直しに向けて(2004.05.20)」

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2004/06/29

支援費制度改革~社会保障審議会介護保険部会 概要/2004.06.28

6月28日、社会保障審議会介護保険部会(厚生労働大臣の諮問機関)の会合が開催されました。
当日は、厚生労働省から委員に対して「介護保険の見直しに係る基本的な考え方(原案)」が示されましたが、支援費制度(障害者施策)と介護保険制度の統合問題については、「(介護は)年齢等によって断続されることのないように提供してゆく必要がある」などと、より前向きな表現によって「統合」に向けた方向性が明らかにされています。

委員からは、「両制度の間ではニーズや目的が違う。支援費制度の効率化を先にすべきだ。」「財政面だけに重きを置いた見直しには、賛成できない。」などの意見が相次ぎ、統合問題に関する部会としての姿勢を示すことは先送りにされました。

このため、介護保険の被保険者の見直し範囲や、受給者の範囲など、さまざまな課題をめぐる考え方については、次回以降の部会会合で検討されることになっています。

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2004/06/27

支援費制度改革~障害者施設では?

支援費制度(障害者施策)と介護保険制度の統合問題については、障害者施設団体の動きが鈍いことがかなり気になっています。
例えば、知的障害者施設の団体である日本知的障害者福祉協会
会員専用ページ(会員=協会加盟施設)に統合問題に対する見解が掲載されているものの、一般向けには非公開で、非常に違和感があります。
要するに、障害者施設として何を考えているのかが、ほとんど伝わってこないのです。

このことは、障害者施設独特の「閉鎖性」を端緒に表わしている、と言い切っても、決して過言ではないでしょう。
言い換えれば、「まさに変わろうとしている」障害福祉に対する危機感が、きわめて希薄なのです。

障害者施設は、措置制度(支援費制度の前身)時代の「ぬるま湯体質」から抜け切っていません。
施設の運営さえ良ければそれでいい、という感覚が、無意識のうちに充満しているのではないでしょうか?
障害者のことをほんとうに思っているならば、支援費制度と介護保険制度の統合問題が抱えているあれこれをもっと直視し、障害者の声を一般の国民に代弁すべきだと思うのですが…。

こんな状況では、正直言って、いままで日本知的障害者福祉協会下の知的障害児・者施設で働いていたことを、恥ずかしく思わざるを得ません。

あちこち調べてみましたが、他の障害者施設団体でも、どうも似たり寄ったりです。
障害者自身の危機感との差が大き過ぎて、やはり、非常に違和感があります。
私としては、この「危機感の希薄さ」が悪い方向に作用してしまわないように祈ることしかできませんが、それにしても、障害者施設のあいかわらずの「ぬるま湯体質」にはあきれ返るばかりです。

なぜ、こうなってしまうのでしょうか?
支援費制度改革も必要なのでしょうが、この際、思い切った「施設解体」を断行するしかないのかもしれませんね。

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支援費制度改革~障害者はいま

2003年4月から始まった支援費制度(障害者施策)は、いろいろと不備な面があるにしても、障害者自身の長年の悲願が実現された制度だ、と言ってよいでしょう。
その証拠に、在宅支援(ホームヘルプサービス)の利用者が、従前の措置制度のときとくらべて激増しました。
障害者がいかに、直接契約によるサービス利用ができる支援費制度を待ち望んでいたか…。それが示されていると思います。

介護保険制度に基づく高齢者の介護と、支援費制度に基づく障害者のケア(介護、介助、支援…。)とは、根本的に質が違います。
介護保険制度では、身体の状態や痴呆の有無などをものさしにして要介護度を決め、それに基づいてサービスを決定してゆきますが、障害者のケアにおいては、日常生活上のハンディキャップを補う「介護」「介助」だけではなく、社会参加や自立をめざすための「支援」が重要であり、それらを総合的に勘案してサービスが決定されなければなりません。

現行の支援費制度においては、少なくとも、上記のような「障害者の特性」をきちんと踏まえた上でサービスの決定が行なわれています。
したがって、介護保険制度のような、ある種「杓子定規」的な要介護認定基準に相当するものは設けていません。
「基準らしい基準がない」ということで、支援費制度を批判する声が一部にありますが、私としては、この柔軟性こそが支援費制度の長所なのではないか、という気がします。

もし、支援費制度と介護保険制度の統合の結果、現行の要介護認定基準(介護保険制度)がそのまま障害者に適用されることになると、「要介護度が低いランクに位置付けられてしまい、サービスを受けられる量が著しく狭まってしまう」障害者(特に、知的障害者や聴覚障害者)がたくさん出てきてしまうおそれがあります。
一方、利用者負担についても問題があります。
介護保険制度では、原則として、費用の1割を本人が負担(応益負担、と言います。)していますが、支援費制度では、負担能力に応じた費用徴収(応能負担、と言います。)を行なっています。
これは、経済的に苦しい立場にある障害者が大半である、という実情を踏まえたものです。
しかし、両制度が統合されると、障害者の負担増につながってゆくことは必至です。

障害者は、支援費制度と介護保険制度の統合に、大変な危機感を抱いています。
6月9日には、東京都千代田区に全国から1,200人あまり(475障害者団体)が集まり、両制度の統合の反対を強く訴えました。
そのときの様子は、以下でごらんになることができます。

全国自立生活センター協議会(http://www.j-il.jp/
「6.9 障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動」
http://www.j-il.jp/jil.files/e0609-houkoku.htm

DPI日本会議(http://www.dpi-japan.org/
「6月9日 全国大行動」
http://www.dpi-japan.org/2issues/2-1shienhi/kaigohoken/040609_rep02.htm

支援費制度と介護保険制度の統合問題は、マスメディアでは「介護保険制度改革」としてとらえられています。
「支援費制度改革」を前面に出しているところは、実は、ほとんどありません。「唯一」と言ってもよいほど、毎日新聞だけが、朝・夕刊を通じて、障害者の立場からの継続的かつ詳細なレポートを続けています(これは、非常に高く評価できると思います。)。
上述したように、両制度の統合問題は、障害者の生きる権利を左右しかねない大問題です。
ですから、マスメディアは、もっと支援費制度を知る必要があるでしょう。また、障害者と手を取り合って、支援費制度の存続の必要性を強く訴えてゆく必要があると思います。
どうか、障害者のためにマスメディアの力を貸してほしい…。そう思います。

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2004/06/26

支援費制度改革~社会保障審議会障害者部会 部会長案了承/2004.06.25

6月25日(金)、厚生労働省の社会保障審議会障害者部会(京極高宣部会長/日本社会事業大学学長)が開かれ、京極部会長が「介護保険制度のしくみを障害者施策(支援費制度)に活用してゆくことは、現実的な選択肢の1つである」とする部会長案を提案し、すったもんだの末、了承されてしまいました。

部会長案では「統合」という言葉そのものは使われていませんが、介護保険制度と支援費制度を統合する方向性が、事実上容認されたことになります。

週明けの6月28日(月)には、社会保障審議会介護保険部会のほうで、障害者部会での方向性を念頭にして、最終的な検討が行なわれます。
いよいよ、両制度の統合に向けたカウントダウンが始まりそうです。

障害者部会の部会長案では、「介護保険制度と支援費制度が統合された場合でも、障害者施策のうち、介護保険制度でカバーできない部分については、別建てで対策を講じる必要がある。」と求めています。
しかし、この対策が確実に行なわれる保証は、正直言ってどこにもありません。障害者にとっては、ここが実に大きな問題なのですが!

25日の障害者部会で部会長案が示されると、「両制度の統合問題についての賛否がはっきり書かれていないではないか!これでまともな議論ができるのか?」という声が、委員から挙がりました。
これに対して、京極部会長は「これは限りなく、賛成に近い内容だ。こちらから介護護保険部会へボールを投げなければ、何も議論が始まらないのではないか?」と述べましたが、そのとたん、委員からの批判の声が相次いでいます。
結局、京極部会長が「言い過ぎだった」と釈明し、反対論が根強かったものの、部会長案が了承されてしまいました。
(注:反対論が根強かったため、部会としての「中間報告書」ではなく、あくまでも「部会長案」として、「反対論併記」のような形式で介護保険部会に提案されます。「中間報告書」は、後日あらためて作成されます。)
「部会長案を介護保険部会に提案することは了承するが、部会として両制度の統合に賛成したわけではない!」という委員の声もありましたが、それはあとの祭りに過ぎません!いまさら、そんな言い訳はしてほしくないです。

とにかく、結論の出し方が非常に性急過ぎます。
確かに、支援費制度の見直しは必要でしょう。
しかし、支援費制度は2003年4月に始まったばかり。もう少し様子を見てからの見直しでも遅くはないのでは?、と思うのですが。

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2004/06/19

支援費制度改革~社会保障審議会障害者部会 ヒアリング/2004.06.18

支援費制度(障害者施策)と介護保険制度との統合問題について、6月18日の社会保障審議会障害者部会ヒアリング(厚生労働省)で、身体障害、知的障害、精神障害の障害者8団体が、それぞれ意見を述べました。
「安定した財源が確保できる」として統合に賛成する団体(全日本手をつなぐ育成会/知的障害)がある一方、「障害者施策は税金によって行なわれるのが原則である」として反対する声も挙がっています。

明確な賛成は1団体(全日本手をつなぐ育成会)。
一方、反対は2団体(DPI日本会議全国脊髄損傷者連合会)で、慎重日本身体障害者団体連合会日本障害者協議会日本盲人会連合全日本ろうあ連盟)およびその他全国精神障害者家族会連合会<条件付き賛成>)が計5団体でした。

社会保障審議会障害者部会では、6月25日に、統合の賛否についての一定の方向性を示す「中間報告書」をまとめる予定ですが、障害者団体の意見が上記のように大きく分かれたため、中間報告書の発表が遅れる可能性も出てきています。

いずれにしても、性急な結論は慎んでいただき、もう少し議論を深めてほしいところです。
また、知的障害者への支援については、介護保険制度の要介護基準をそのまま適用すると大幅なサービス低下が懸念されるため、あくまでも私論ではありますが、全日本手をつなぐ育成会の姿勢は甚だ疑問です。


【障害者8団体(順不同)】

<身体障害>
● 日本身体障害者団体連合会
 http://www.nissinren.or.jp/
● 日本障害者協議会(JD)
 http://www.jdnet.gr.jp/
● DPI日本会議(障害者インターナショナル)
 http://www.dpi-japan.org/
● 全国脊髄損傷者連合会
 http://park7.wakwak.com/~sij/
● 日本盲人会連合
 http://www.normanet.ne.jp/~nichimo/
● 全日本ろうあ連盟
 http://www.jfd.or.jp/

<知的障害>
● 全日本手をつなぐ育成会
 http://www1.odn.ne.jp/ikuseikai/

<精神障害>
● 全国精神障害者家族会連合会(ぜんかれん)
 http://www.zenkaren.or.jp/


【関連リンク】

● 支援費の介護保険への統合を考える(JD)
 http://www.normanet.ne.jp/~jadh/jdnews2004
●知的障害者福祉の安定と発展のために~介護保険制度との統合は「必然」(全日本手をつなぐ育成会)
 http://www1.odn.ne.jp/ikuseikai/2004/0616-1.html
● 精神障害者保健福祉施策と介護保険制度のあり方に関する意見(ぜんかれん)
 http://www.zenkaren.or.jp/zenkaren/topic/20040618/01a.html

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