福祉の仕事

2008/07/19

介護職員の待遇改善問題

財団法人介護労働安定センターは、平成19年度介護労働実態調査の結果をまとめ、センターの公式サイトで公表しています。
この調査は、無作為抽出された全国約1万7千箇所余(職員数にして約5万1千人余)の介護事業所を対象に行なわれたもので、回答率は約3割でした。

調査によると、平成18年10月から平成19年9月までの1年間の離職率が2割超。その7割以上が、3年未満の勤務で離職しています(1年未満が39%1年以上3年未満が36%)。
「働きがい(56%)や人の役に立つこと(35%)を期待して就職しながら、重労働に対する賃金の低さへの不満(49%)社会的評価の低さへの不満(38%)から、結局、短期間で離職してしまっている」という実態も浮き彫りになっています。

平成15年・平成18年と、相次いで介護報酬が減額改定されたことに伴い、事業所の約2割が人件費を削減しています。
事業所の約65%は「現在の介護報酬体系では、十分な賃金を払い得ない」と回答。また、同52%は「十分な人材育成の時間さえ確保できない」とし、雇用する側としても職員の離職を食い止めるすべを持っていないようです。

このような現状の中、今年5月21日に可決・成立した「介護従事者処遇改善法」を受けて、厚生労働省の「社会保障審議会介護給付費分科会」は7月17日、介護サービス事業者の事務負担の軽減策と人件費の確保、センター調査のあり方を話し合いました。
それによると、センター調査そのものに対して「介護の現場は見込みのない職場である、ということがセンター調査によって流布されてしまうのではないか」などの批判的意見が相次いだようです。
しかし、正直言って、これは批判の矛先を著しく間違えているように思います。
分科会メンバーの程度の低さが透けて見えてきてしまう、と言っても、決して過言ではないでしょう。
問題とすべきなのは、センター調査のやり方などではありません。「介護という事業をどのように国が位置づけ、どのように介護報酬として還元してゆくのか」ということこそを問うべきです。

一方、厚生労働省職業安定局の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」は7月18日、来年度に予定される介護報酬の見直し(見直しは、3年に1度の割合で行なわれます)に関して、引き上げの方向を提言する中間報告書案をまとめました。
介護報酬の引き上げにより、一定の賃金を確保して離職率の低減に努めるとともに、職員の専門性をより高めてゆくことをねらいとしています。
なお、人事評価制度の見直しや、育児休業制度の拡充(介護職の大半を占める女性に配慮)につながる内容も中間報告書案には含まれており、さらなる検討が望まれるところでもあります。

新・介護報酬は、今年末の予算編成時に決まります。
障害者自立支援法の見直しも同時期ですが、介護報酬の改定と合わせ、自立支援給付にかかる報酬も上げてほしいものです。
仮に利用者負担が増えることがあったとしても、介護職員の賃金を上げてその職員の質を確保してゆくことこそが、最終的には、高齢者や障害者の利益につながってゆくと思います。


【追 記】

2004年(平成16年)2月26日にオープンした当ブログですが、オープン約4年半を経て、本日(2008年7月19日)1時42分過ぎに30万アクセスを突破しました。
この間、公私ともにいろいろなことがありましたが、たくさんの方々からご支持いただけましたことに、厚く御礼申しあげます。
今後とも、私のでき得る範囲内で精一杯の情報提供等をさせていただきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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2008/07/11

改正社会福祉士・介護福祉士法に隠された問題点

昨年11月末に、「改正社会福祉士・介護福祉士法」が可決・成立してます。
この改正法、表向きは「社会福祉士や介護福祉士の資質向上のため」っていうことになってます。そのため、「准介護福祉士」なる新資格も創設するとか。社会福祉士・介護福祉士の制度が発足して以来20年を経て、初の見直しです。

ところが、実際は「あまりにも人材難なんで、フィリピンやインドネシアから介護従事者を求む!」っていう政策による、とんでもない苦肉の策。
何か、国に激しく勘違いされてるような気がします。

そもそも、人材難は、介護保険法や障害者自立支援法などの大失敗による介護報酬等の低下から来てるもの。資質にクエスチョンマークが付く社会福祉士・介護福祉士の存在は決して否定しませんけど、問題の根は「法制の大失敗」ってところにあるんじゃないのかな?
まぁ、一応、この点は国も自覚はしてるようで、「改正法施行5年後をメドにさらに見直す」っていう規定だけは盛り込まれてます。

で、普通に考えて、日本語でのコミュニケーションもあやふやな外国人に、ちゃんとした介護が務まるとは思いません。
准介護福祉士として外国人を採用するそうですけどもね。

コミュニケーションっていうのは、たとえどんなに障害などが重かろうと、非常に重要です。
そのコミュニケーションは日本語で行なわれなければあまり意味がないはずだし、認知症高齢者に対するサポートなんかの場合だと、その人が生きてきた「わが国独特の文化的背景」なんかも特にきちっと理解できてなければ。
となると、う~ん、言葉は悪いんですけど、外国人介護従事者は「単なる雑用係」として使い捨てになるのがオチかも。

そりゃあ、介護現場の厳しい実態を考えれば、ネコの手も借りたいというか、少しでもそういった「雑用係」の人がいてくれたほうがいいんでしょう。
でも、はたしてそれで介護の現場が良くなるの?「否」だと思うんですけど。
それよりも、「きちっと日本人の介護福祉士を育成していって、かつ、その資質に見合っただけの賃金を保障するべく介護報酬もぐんと上げてゆく」っていう考えのほうが、ずっとまともだと思うんですけどねぇ。

「介護報酬を上げる」っていうと利用者負担増につながるんで、特に障害者はうるさく騒ぐかも。障害者自立支援法で翻弄されてますし。
でも、それ相応の負担をしなくっちゃ、われわれが真に望んでる介護なんか受けられっこない。
そこだけは踏まえておいてほしいと思いますし、「カネは払いたくない。でも、たっぷり介護してほしい。」なんてのは通らないと思います。
もちろん、「“広く・浅く、一般の国民にも負担してもらう”ってことがおろそかになってる結果、障害者や高齢者への自己負担が集中してる」ってことを国が猛省し、絶対にあらためてゆかなくっちゃならない。ただ、だからと言って障害者や高齢者などの当事者自身が何も負担しないでいいのか、っていうと、やっぱり「それは通らない」って思います。

いずれにしても、法改正の裏側には、介護現場の実態や本人負担のあり方を巡る深刻な問題が。
一般の国民はこういうことには無関心な人が多いんでしょうけど、せめて野党(特に某党の小沢党首。全然空気が読めてないんで、ありゃダメだし、無責任過ぎ!)とかは、与党との政争に明け暮れてばっかしじゃなくって、きちっと問題を掘り下げてほしいです‥‥。

【PDF】
改正社会福祉士・介護福祉士法の詳細

【リンク】
改正社会福祉士・介護福祉士法
http://www.jascsw.jp/2007_kokkai_houkaisei/index.html
日比経済連携協定に基づくフィリピン人介護福祉士・看護師の受け入れ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other07/index.html
日・インドネシア経済連携協定に基づくインドネシア人介護福祉士・看護師の受け入れ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other22/index.html

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2007/07/31

厚生労働省、障害者就労支援専門職創設へ

厚生労働省は7月23日、障害児・者が通う特別支援学校(養護学校)や福祉施設と企業との間を橋渡しする、障害者就労支援専門職の創設を打ち出しました。

これは、障害者自立支援法で明確にされた障害者就労支援策をより確実なものにしてゆくための一環で、雇用・福祉・教育の連携をよりスムーズに進める調整役の育成もめざしています。
年内にも有識者研究会が設置され、国の外郭機関などが認定するシステム(厚生労働省所管の独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」による研修・認定を前提とする方向。ちなみに、同機構は現在、ジョブコーチ事業などを専門職員養成の形で支援しています。)を念頭に置いた具体的な制度が検討されることになりました。

この制度の主な対象となるのは、現在、既に職場適応援助者事業(ジョブコーチ事業)などの障害者就労支援に取り組んでいる、社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO法人)などの職員。
一定の経験年数や研修の受講を専門職認定要件とする方向で、障害者就労支援に取り組んでいる福祉職員の資質向上・キャリアアップも意図されています。

このような動きと合わせるかのように、厚生労働省の障害者雇用関係の研究会は7月27日、「障害者雇用促進法に基づく雇用義務障害者数の算定の際に、パートタイム労働者も分母に加えよ」との報告書(案)を公表しました。
厚生労働省職業安定局「多様な雇用形態等に対応する障害者雇用率制度の在り方に関する研究会」)

現在、民間企業が雇用しなければならない障害者の割合は、障害者雇用促進法施行令第9条により全従業員数の1.8%(ちなみに、昨年6月1日現在の実雇用率は1.52%)ですが、分母となる全従業員数にはパートタイム労働者は含まれていません。
そのため、報告書(案)による法改正が実現すれば、パートタイム労働者の比率が高い企業など(特に大手スーパーマーケットなど)を中心に、法定の雇用障害者数の増加が期待できます。
厚生労働省は最終的な報告書をまとめた後、厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会に議論の場を移して、来年の通常国会に関係法の改正案を提出する方向になっています。

平成19年版の障害者白書によると、平成19年2~3月に障害者団体の協力によって行なわれた障害者意識調査(約5000人中1400人が回答し、回収率28%。私も回答。)では、「もっと働けるようにするための法整備が必要だ」と感じている障害者が約80%にものぼっています。
同時に、「最近10年間で働きやすくなったか?」との問いには39.5%が「変わらない」と答え、「働きやすくなった」の36.0%を上回ってしまいました。
また、この意識調査では、就労に関する企業の差別や認識不足も浮かび上がっています。
「障害を理由に、就労に関して差別を受けたと感じたことはあるか?」との問いに、「少しある」が32.9%、「とてもある」が19.2%を占め、何らかの差別・認識不足の影響を受けている障害者が過半数にのぼっているのです。

障害者雇用率を上げるための取り組みの必要性は、言うまでもないことです。
しかし、その前提として、障害や障害者に対する理解がより進んでゆかないといけません。
そのためには、障害者団体や国・自治体による啓蒙なども大切ですが、障害者自身がもっともっと声を大にしてゆかなければならないと思います。
障害者白書は「障害を理由とした差別の禁止や権利擁護のために、よりいっそうの取り組みが必要である」と指摘していますが、障害者差別禁止法などの形で明確に法律に位置づけ、加えて、厳しい罰則も設けるべきでしょう。

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